不惑15 | 神様と二人三脚 

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不惑15

07 04, 2012



母とわたしを乗せた救急車は、
母が手術を受けた病院に
向かいました。

到着し、
診察を受けて、
再入院がすぐに決まりました。

診察して下さった当直医は
「何でこんなになるまで放っておいたんですか」
と語気荒く言いました。

その言葉で
しばらくわたしの頭の中は
混乱しました。
そしてわたしは、
堰を切ったように
泣き崩れました。

母は本当はしんどかったのを
わたしの手を取っては
悪いからと思い、遠慮して
つらいのを我慢していたようでした。
わたしは、その母の思いに
気がつけませんでした。
そんな自分が情けなくて悔しくて、
母に申し訳なくて、
暗い暗いCT検査室の前の廊下で
泣きに泣きました。
今更泣こうが喚こうがもう手遅れだ
そんな心がわたしを責めました。

後から到着した主人と義母は
取り乱すわたしを見て
戸惑っているようでした。

検査が終わり病室に行くと、
母はわたしの顔を見るなり
「教会に帰りたい。病院はもう嫌だ」
と哀願しました。
そんな母に
「今は病院にいて治療しないと
いけないから、少し辛抱してね。
先生に相談してみるから」
そうなだめて、
後ろ髪を引かれる思いで
病院を後にしました。

翌日、早速担当医の先生に相談しました。
先生は、肝臓へのガンの転移と出血があることを
お話下さいました。
それを承知した上で
もうどうしようもないのであれば、
母の言う通りにしてやりたいということを
お伝えすると、
了解して下さり、
ただし、今の状態では、退院は無理である。
輸血などの自宅療養の為の治療に
数日を要するとのことでした。
それから
自宅に往診して下さる医師を
探さないといけないと言われました。

わたしは、
母の再入院のことをお届けに
親教会にお参りしてお取次をねがい、
往診して下さる先生のご都合がつくよう
お願いしたところ、
親教会の信者さんがお勤めになっている
循環器科の先生に相談してみたら
ということになり、
すぐにおかげを頂き、
その先生にご快諾頂きました。

そのことを母の担当医の先生にご報告して、
早速紹介状を書いて頂いて
退院の準備が整いました。

5月9日、退院の日の朝
準備を進めるわたしに
若い看護師さんが
「今の状態で退院なんて無茶です。
もう一度考え直しては?」
と引き止めて下さろうと
しました。
よっぽど医療の現場で
「常識的に有り得ない」ことを
しようとしているんだということが
そのことでよく分かりました。

「母の思い通りにさせてやりたいんです」

その看護師さんに
そう答えることが精一杯でした。

「今度こそ何があっても
母の思い通りにさせてやりたい」
そういう覚悟で
これからは母のことをしっかり
看てあげたい。
もう逃げてはいけない。
甘えてはいけない。
時間がない。
そう思いました。

帰りに往診して下さる先生のところに
紹介状と検査資料を持って
診察に伺いました。
肝臓からいつ大出血が起こっても
おかしくありません。
ということと、
基本は午後からの往診ですが、
容体が急変した場合は、
すぐに連絡して下さいとのことでした。


退院に先立ち、教会では
母のベッドを奥の寝室から
居間と台所に近い
広間に移していました。

もう自力では歩けなくなっていた母を
主人が車からそのベッドまで抱えて
行きました。
主人が
「大丈夫ですか?」と声をかけると
「すまんねえ、迷惑をかけて」と母は言いました。
結局それが主人と母が交わした
最期の会話らしい会話となりました。

それからは、わたしは、24時間体制で
母の看病をさせて頂きました。
母と同じ部屋で
長女と一緒に寝させて頂きました。
夜中長女の授乳が終わったと
思って寝付いた頃、
母の呼ぶ声に起こされ、
そして、不安そうな母に
「側にいるから大丈夫よ」
となだめる、
その繰り返しでした。

母は、再入院以前は、
ポータブルトイレで
自力で排泄が出来ていましたが
再入院以降は、オムツになりました。

長女のオムツを替えて
母のオムツを替える。
なんだか不思議な感覚でした。
今から育とうとするいのちと
消えていこうとするいのちが
わたしの中で
思わぬ形で重なり合った瞬間でした。

そして、迎えた5月12日のお昼前、
その頃日参されていた信者さんと言葉を交わし、
帰られた後に突然母が、
身体を起こしてベッドから降ろして欲しいと言います。
夜勤明けで居間にいた主人を呼んで
二人でなんとか
一緒に降ろしました。

「寝ている場合じゃない、起きて御用させてもらいたい」
そういう母の心の叫びが聴こえてくるようでした。
何があっても母の思い通りにする
それがわたしの看護方針でしたから、
あえて止めませんでした。

起きようとしても起きれないようなので
手を貸そうとすると、
その手を払います。
あくまでも自力で起きたいようでした。

目の前で
力のない起き上がり小法師のように
起きては転びと起きては転びして
七転八倒する母を
わたしはただただ茫然と
見守るしかありませんでした。

どの位の時間が過ぎたかも分かりません
何度挑戦しても起き上がれない母の姿を見るのが
とうとう居た堪れなくなったわたしは、
「お母さん、もう、頑張らなくていいよ。もう
頑張らなくていいの。もう、ゆっくり休んで、、、」
と泣きながら母に懇願しました。

その瞬間、母の力は抜け、
わたしの言う通りにベッドに横になったかと思うと、
「お腹が痛い」といって今度は苦しみ始めました。

わたしは、すぐに往診を頼みました。
痛がる母に、
「先生が来るからもう少しの辛抱だから」と
声をかけますが、
「痛い、痛い」と苦しみます。
わたしは、咄嗟に
「お母さん、金光様!!金光様!!」と
金光様とお唱えするように促しました。
すると、母が
「金光様!どうぞご無礼をお許し下さいませ」と
叫びました。

往診の先生が到着し
すぐに痛み止めの注射をすると
すぐに母は大人しくなりました。

「血圧が下がってきています。
最期に会わせたい方が居られたら今のうちに連絡を」と
先生が仰いました。
わたしは、急いで長女の守りをしてくれていた
主人を呼びました。
主人は、長女を抱っこしたまま母のベッドのそばにきました。
それから近くに住む叔父(母の弟)に連絡しました。

そして、わたしは
母の側にいき、母の手を握りました。
母の手はそういえば
朝から冷たかった
そのことに改めて気がつきました。
母は見えているのか見えていないのか
分からない眼でわたしの顔を凝視しているようでした。
「お母さん、お母さん」
声をかけるけど、返事はもうなく、
何かを言いた気にわたしの顔をジッと見ていました。

どの位時間が経ったでしょうか。
やがてその眼もゆっくりと閉じられ、
母は、大きいため息のような息を一息つくと、
二度とその息は繰り返しませんでした。

往診の先生が脈や瞳孔を確かめ、
「15時55分。御臨終です」と
静かにその時を知らせて下さいました。

と、同時にわたしの知りうる、
母の一生の出来事が
走馬灯のように心に映り、

「お疲れ様でした」


という言葉だけが
辛うじてわたしの口をついて出てきました。



本日も
読んで頂き、
ありがとうございました。
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賑やかな日々を送りつつ
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このブログは
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信仰生活について
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